学童保育と私 4 変わらなきゃ孤立してしまうよ

虐待を受ける男の子 子育て
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さて、紹介をしてきている学童の子ども第4弾ですが、こちらは良い変化がなかなか見えていない男の子Mくんです。
早速状況と対応をご紹介いたします。

学童保育と私 4 変わらなきゃ孤立してしまうよ

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自分だけが損するのが許せない

廊下を走る、おもちゃを投げる、友達からおもちゃを取る、嘘をつく、人に嫌なことを言う、当人が見ていないところでその子が嫌がることをする、手が出る…などなどやってしまうMくん。
その度に職員の誰かしらかが注意をしますが、必ず帰ってくる言葉が「俺だけじゃない」「だってアイツも」というもの。
言われる度に「じゃあ他の人がやってたらやっていいの?」と聞き返しています。
でも、1日に何度も、ほぼ毎日言い続けてきてもまっっったく止まらず繰り返します。

考えなしに人の嫌がることを言ってしまう

差別的な発言や根拠もなく人をバカにする発言をしてしまいます。
親御さんが外国人の子に「◯◯(国名)人だから分かんないんだ」と言ったときは、もちろんすぐに叱りました。
他にも、「アイツは俺よりバカだ」「お前いるのかよ最悪。あっち行け」…。

でも、自分に同じことをされるととても怒る

Mくんがやってしまうことを他の子がMくんにしてしまったときは、気にしないのではなくとても怒ります。
すぐに私を始め職員に言いつけたり、手が出たりします。もちろん、仲裁したり止めたりします。
つまり、Mくんは「やられたら嫌なこと」を分かっているのです。

注意をしても通らず嘘をつく

注意しているときに目が合うことはほとんどなく、手遊び(キツネやカニを作ってみたり)や別の子のキーホルダーをいじってみたり…とにかく話している人の方を向けません。

耳をふさぐ子ども

どうしてそんなことをしたのかと理由を聞いても嘘をつく始末です。
いきなり叱るという事を私たち職員はしません。必ず理由を聞いています。
Mくんにも当然聞きます。しかし、「俺は何もしていないのに、○○が××と言ってきた」などと言われます。
そこで全く利害関係のない、側にいた別の子に状況を聞きますが、先ほどのMくんの話が嘘だと知れてしまいます。
そうするとMくんは「それは昨日の話だけど、でもさっきは違くて…」などと歯切れ悪くごまかそうとします。
昨日の話は関係なく、今の話だけで話をしてほしいと伝えると、嘘を嘘でごまかそうとしてドツボにはまってしまってしまいました。
そんな事が恒常化しています。

その結果、
だんだん回りから人が離れていきました
「(仲間に)いれて」と言っても断られてしまったり、「(Mくんが入るなら)やめる」と言われてしまっています。
賢い子は「あいつは嘘つきだから」「自分のルールじゃないとズルだとか言いがかりをつけるから」と関わりを拒絶してしまっているのです。
これはMくんにとって望ましくなく、Mくんが選んだ結果ではないので、私にとってはとても悲しい事です。

理由もなく問題行動をするだろうか?

なぜこういう言動をするか、理由や原因(発達障害や病気等の診断が降りているわけではない)を考えました。
考えられた大きな要素は下記3つでした。

  • 片方の親より虐待を受けていた
  • 長年の虐待により自己肯定感が低い
  • 自衛のために虚勢を張り、注意(=自己否定)を受け付けない

「・片方の親より虐待を受けていた」については、すでに現在の保護者の方が離婚なさってMくんを守れるようになっていますが、だからと言って受けた精神的な傷がなかったことにはなりません。
「・長年の虐待により自己肯定感が低い」については、物心ついたときに子どもらしい間違いや失敗についても虐待という反応をされて続けていたら、引き起こされるものとしては有り得ます。Mくんの中では「(虐待されるほど)自分ができない人間だ」と刷り込まれてしまっているのです。
「・自衛のために虚勢を張り、注意(=自己否定)を受け付けない」については、上記で本来信頼できるはずの親に否定され続けてしまい、削られた心の灯を守るために鎧を作り、折れそうな心を守るため「聞き入れない」「忘れる」という心理反応を起こし、それが習慣化してしまったのであれば納得ができます。

虐待を受ける男の子

私たちができること、やったこと

そんなMくんに私たちが行ったことは、

・都度、静かに注意をする
・嘘を指摘する
・自分がされたらどうかと考えさせる
です。

「・都度、静かに注意をする」は問題行動の度にみんなの前で大きな声で叱らず、軽度のことであれば、そっと「それはやっていいの?」と注意することです。
本人が落ち着いていれば「どうしたの?知っているじゃない」とか「まーた、今日はそんな気分じゃないのかい?」などと「いつもはできている前提」で声をかけたりします。そうすることで地に落ちた自己肯定感を育てていきつつ、問題行動の収束をはかりました。
「・嘘を指摘する」では、嘘をついても見透かされている事、真実を述べれば余計に叱られることはないという事を学んでもらうためです。
見られているので、すぐに嘘だと知れてしまう事、それが誰の得にもならないことを知ればやらないようになるからです。
「・自分がされたらどうかと考えさせる」ということもウェイトが大きかったです。とにかく衝動的に出てしまうので、まず考えてと伝えていたのですが、衝動を我慢するのが難しいので、やってしまった後にすぐ「自分だったら」と考えて、嫌だと思ったら謝るというようにトレーニングしました。
相手の子は直後はショックや怒りが強いのですが、そこは私たち職員が間に入ってケアをして、双方に落ち着いた頃合いに謝らせるという機会を設けました。

Mくんと周りの子ども達の変化

かなり時間はかかったのですが、優しい子たちが少しずつ受け入れ始めてくれて、それが功を奏してM君も変化を見せ始めていきました。
・謝れる自分=謝ることは負けや自己否定ではなく、自分がされた時と同じで「また仲良く遊ぼう」という手を差し伸べること
・大人が見ている事=公平に対応するために大人が見ているので嘘が意味をなさない事、Mくん以外の子が同じことをしても注意されるので否定ではない事
が分かってきたようです。

まだまだ警戒心の強い子たちからは距離を取られていますが、辛抱強く続けていくことで改善していくのではと思っています。

 

先生は残念ながら君の受けた傷を理解することはできないけれど、君の階段になることはできるよ。
光を浴びるため、辛いけど一緒にがんばろう!

■□学童と私シリーズ□■□

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