さて、「学童保育と私 1 どうやって育てたらそんなよい子に!?」で親御さんの教育の賜物というような女の子をご紹介しましたが、まだまだそんな風に驚かされる子どもがいます。
その女の子は賢さ、面倒見はもちろんなのですが、特に揉め事の仲裁スキルやボランティア精神がとても高いSちゃんです。
学童保育と私 3 本当に9歳ですか?
仲裁力が高い
別の子どもたちがグループの名前を決める時に、「Aがいい、Bは嫌」「Bじゃなきゃ嫌だ」と揉めていることがありました。Sちゃんはそのグループに所属しています。もめている子どもたちが勢いもあるのか互いに引かない、引けないという状態になって一呼吸置いたところでSちゃんが優しく声をかけました。
「Aという名前はいいよね。どうしてこれがいいと思ったの?」と。声をかけられた子どもたちは発案者に答えさせました。
するとSちゃんは「そうだね。私もいいと思う。でもちょっと待ってね」と変わらず優しい声でにっこりと伝えると、今度は「Bという名前も素敵だと思うの。どうしてこれがいいのか教えてね」と。
Sちゃんは両答えを、ともに口を挟まず、うんうんと頷いてしっかり答えを聞いていました。
そして両方の答えを聞いてからほんの僅か考えてまた口を開きました。
「あのね、私はどちらも素敵だと思うの。Aは○○というのがあって好きだし、Bは◇◇というのも好きだよ。だから…」
この後の言葉は大人の私もハッとしました。
「二つを合わせてCという名前はどうかな?」
例えばAが鉛筆、Bが丸だったら、ただくっつけて鉛筆丸というのではなく、そこから連想されるコンパスを提案したようなグループ名。
揉めていた子どもたちは、どちらの意見も拾われた結果に「すごくいい!」と飛びついて丸く治まりました。
二つ以上の意見で議論になったときに、両意見を参考に別の答えを導き出すという手段を取れる大人はもちろんいますが、あまり見かけてこなかったというのが私の社会人生活でした。
今までさんざん「自分の方針以外は考えるな」「自分のやり方が一番いいんだ」、という全く受け入れない大人や、提案を求められて行っても「ダメそうだからダメ」「ダメな理由は自分で考えろ」なんて否定はされても打開案のヒントすらくれない大人がたくさんいました。
話はそれましたが、そんな大人が多い中、良い手段をわずか9歳の子どもができたことが驚きでした。本当は20代以上ではないのかと。まず間違いなく人間は2、3週目なのでしょう。
Sちゃんの自慢とは・・・?
別の日、そんなSちゃんが珍しく宿題で悩んでいたので声をかけました。
作文で題材が「私の自慢できるところ」というものでした。100位くらいからカウントダウンしていって上位5番位を書いたらよいのでは?とアドバイスしてしまうほど、良いところがたくさんあるSちゃんですが、それは彼女がどうしたいかを尊重しなくてはいけません。
「自分の自慢できるところを書いている」のだと人に見られるのは恥ずかしいとのことで、子どもたちをさりげなく別の遊びに誘導しつつ、少し離れて見守りました。するとしばらくして書き上げたようで、Sちゃんはちらりと見せてくれました。
そこには「じまんのかわいい弟がいることです」と。
私はそんなSちゃんの先生ができたことが自慢です。
なぜそんな素敵な子どもになったのか?
どうしてそんなに素敵なSちゃんに育ったかというと、Sちゃんの資質というのもありますが、やはり親御さんの育て方だと思われます。
お母さまにはよくお会いしてお話しすることがあったのですが、私も尊敬する方です。
まずお母さまはお二人のお子さんをそれぞれちゃんと別個人として見ていて、Sちゃんと二人っきりの時間を作ってあげる時もあれば、その逆で弟さんとの時間もあります。お姉ちゃんだから我慢しなさいということがほとんどなく、弟がいるから仕方ないという事をかなり避けられて愛情を注がれていたのでSちゃんも信頼と安心の上で、私は姉だからと率先してできることをやるようになっていました。
また、学校や学童保育でわずかでも伝達ミスなどがあれば、しっかりご指摘をされています。でもけしてモンスターペアレントではありません。
ちゃんと学校や学童保育からの書類に目を通し、他の子の親御さんと連絡を取られ、自分の子どものことについてアンテナを張っていらっしゃるのです。
ご指摘をいただいたことがあるのですが、怒るだとか感情的なことはなく確認のご連絡で、ご説明をさせていただければご納得をいただけて、なおかつこちらに対しても気遣っていただけるという素敵な方です。普段も腰が低くて、Sちゃんの親御さんと言われるとうなづけます。
お父さまも子育てにはとても積極的で、Sちゃんからよく親御さんそれぞれと楽しく過ごした話を聞いています。
□■□学童と私シリーズ□■□
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